人に優しく、地球に優しく。ピースフードコミュニケーター・新納平太さんに聞く、食への想い「志動の理由、教えてください!」vol.2

 

誰かや何かのために志を持って活動する人は、なぜその一歩を踏み出し、行動し続けるのか。
きっとそこには彼らの活動を支える理由があるはず。

本連載では、志を持って活動する方にインタビュー。
その方が何を想い、なぜ活動を始めたのか、その理由を伺います。

第二回はピースフードコミュニケーター・新納平太さん。

過去には愛知万博をはじめ、環境型イベント等でのキッチン運営を担当。

現在はオーガニックフードケータリング「PEACEDELI」の代表やNPO法人「BeGood cafe」の代表理事を務める一方、「REBIRTH PROJECT CATERING」やイベント「美味しい水曜日」など、リバースプロジェクトの食に関するプロジェクトで主宰者として活躍されています。

今回は食を通して環境問題や社会問題の解決を目指す新納さんに、活動の根幹にある思いについて伺いました。

 


これまで意識したことのなかった“現実”を知った


新納さんは、約20年ものキャリアで食に関する活動を精力的に行ってきました。

そのきっかけは、ある映画との出会いでした。

新納さん(以下、新納):今の活動のきっかけは、20年以上前に環境問題を取り上げたドキュメンタリー映画です。当時、学業のために地元の田舎から東京に出てきていて。それまでは、環境問題とかエコとか全く意識していなかったんですが、その映画を見たことで、地球で起きている現実を目の当たりにしました。環境問題の解決無くしてはこのままの生活が成り立たないことを知り、衝撃を受けました。

鑑賞後、これからも自分たちが健康に生きるために、何から改善していけば良いのかと考えました。その時に浮かんだのが食事でした。食事って人が生きるために不可欠な行為ですからね。食事に関する環境問題や社会問題に関心を抱いたのもこの頃からです。

新納:その後、2000年ですかね。今、代表理事を勤めているNPO法人「BeGood cafe」にボランティアとして参加するようになったのは。そこでは当時としては珍しく、環境問題を含め様々なテーマでトークショーやファッションショーなど、300人から400人規模のイベントを毎月行っていました。 そこでボランティアとして活動するうちに、いつしかフードチームに選ばれ、ケータリングや様々な環境型イベントで料理を振る舞うようになりました。

元々趣味が料理だったこともあり、充実した日々を過ごしていましたね。今思えば、そこで得た経験や知識、人との繋がりが現在の活動の基礎になっています。

 


現在の活動へとつながる、二つの転機


NPO法人「BeGood cafe」にて、多くの人や食と出会った新納さん。

この時期には、食に対する考えに影響を与えた二つの転機があったと言います。

 

新納:一つ目は、長男の子育て。2003年に長男が生まれた時、妻が母乳で子供を育てたいという思いを持っていて、助産院で食の指導を受けていました。当然、母乳には母親の食生活が反映されるので、そのことが妻自身の食生活を見直すきっかけになって。食にはかなり気を使っていましたね。

こうした妻の姿を目の当たりにして、食べ物で人間は作られるということを強く感じました。当時、食品添加物が引き起こすアレルギーが広がっていると聞く中で、子供達にちゃんとした食事を与えたいな、と親として思ったことを覚えています。

リバースプロジェクトのポスター。写真の女の子は、なんと新納さんの娘さん!(写真:筆者撮影)

新納:二つ目は、愛知万博。当時、僕は食に関するイベントに携わり、マクロビをはじめ体にとって優しい食事をイベントを通して発信していました。ただ、正しい健康食というものに固執しすぎていたところがあって。大きなイベントですから、気負っていたんでしょうね。

その時に、あるマクロビの先生から、「別にカップラーメン食べたっていいんだよ。伝えたいという思いさえしっかり持っていれば気負うことはないよ。」と言われたんです。正直、マクロビを実践する方って「(食事に関して)あれもダメ、これもダメ」と言うことが多いのですが、まさかマクロビの先生からそんなことを言われるとは(笑)

四角四面に頭だけで考えるのではなく、自分の感覚を信じ、柔軟な面を持ってもいい、ということなんでしょうね。この経験を経て、自然体で食に向き合うようになりました。

 


多くのケータリング事業に携わってきた理由


(写真:新納さん提供)

「PEACEDELI」や「REBIRTH PROJECT CATERING」など、これまでに多くのケータリング事業に携わってきた新納さん。聞けば、これまでのキャリアで固定型店舗を持ったことはほとんど無いとのこと。彼はなぜ、ケータリングという形態にこだわるのでしょうか。

新納:クライアントに最適な形で食の魅力を伝えられることが、僕がケータリングを続けている理由の一つとして挙げられますね。基本的に、ケータリングはクライアントとのコミュニケーションを通して作り上げていくことが多いです。環境や人に配慮した食事を出します、というのは前提にありますが、クライアントのご意見はもちろん、世代や性別、イベントのテーマなどから調整していきます。時には、水道もガスも通っていないような場所で料理をしてくれ、というご依頼も(笑)

ですが、こうした限られた条件下だからこそ純粋に仕事としての楽しさを感じています。これまでの経験と技術を活かしてどのように料理を提供するか、と試行錯誤し、実現することにやりがいを感じているんです。

 


コミュニケーションが新たな“美味しい”を生む


きっとタイトルを見て、「ピースフードコミュニケーター」という肩書きに「?」となった方もいらっしゃるのでは?

実はこの肩書き、新納さんのオリジナル。

耳馴染みのない「ピースフードコミュニケーター」という肩書きは、彼の活動の根幹にある想いを表していました。

 

新納:コミュニケーションをとること。これがケータリングで重視していることの一つです。実は毎回、クライアントに5分でいいのでお客さんに料理の説明をさせてくださいと伝えています。内容としては食材や料理の背景はもちろん、環境問題や社会問題の解決に向けて目の前の料理がどのようにアプローチをしているのかを伝えています。

例えば、パーティの場にケータリングで呼ばれたとします。多くの日本人にとってはパーティーは名刺交換の場。食事を楽しむことを二の次にする方達ってほとんどのように思います。そして、経験上そんなパーティーの場では食べ残しが多いんですね。しかしパーティのはじめに、今この場に料理が出されるまでのプロセスと生産者の方の想いを伝えると、いつも食べ残しが減ります。伝えるだけでもフードロスを減らすことにつながるんです。

最近はSDGsの広まりとともに、企業にお勤めの方を中心に環境問題や社会問題を意識する人も増えてきたので、「今日の食事はSDGs的にこんな工夫をしています」っていう説明ができるようになったことも追い風になっています。

ある日の「美味しい水曜日」のメニュー。獣害問題を受け、駆除された鹿肉や猪肉を使用したメニューが並ぶ。(写真:筆者撮影)

新納:ケータリングは場づくりだと思うんですよね。今回の取材の話を受けた際、改めて自分の専門領域って何だろうと考えたのですが、僕の場合は“場づくり”だという結論に至りました。リバースプロジェクトでやっているイベント「美味しい水曜日」なんかは特にそうですね。「美味しい水曜日」では、「五感で楽しむ食事」をコンセプトに、毎回テーマを変えて料理を提供しているのですが、時に参加者に味噌を仕込んでもらったり、ハンバーグをこねてもらったり、体験型のプログラムも用意していますね。これらも、実体験を通して食への理解を深める大切なプロセスです。

食事って、ただ食べるよりも知って食べる方が楽しいし、美味しいですからね。そんな時間を提供するのも、「美味しい水曜日」の目的でもあります。

 

(写真:リバースプロジェクト公式HP「美味しい水曜日『味噌仕込み』」より)

新納:僕が幼い時、祖父母が家庭菜園を、父が陶芸家をやっていました。家の食卓には、父が作ったお皿の上に自分たちの野菜が料理として出てきていました。今思えば、本当の意味で豊かな食事ですよね。その経験から食は“楽しいもの”というイメージが僕の中であります。今の活動での場づくりにも反映されているのかもしれません。

ケータリングでも「美味しい水曜日」でも、食事と体験、そして会話を通して、今起きている環境問題や社会問題について考えていただくきっかけを生み出す。それが、僕が「ピースフードコミュニケーター」を名乗る理由です。

 


長いキャリアを経て芽生えた、新たな想い


(写真:新納さん提供)

環境問題を知ったことをきっかけに活動を始めた新納さん。これまでに沢山の方々に食の楽しみを提供してきました。

最後に、数多くの食と人に出会ったからこそ、彼の中で芽生えた新たな想いについて伺いました。

新納:最近になって環境や人の健康はもちろん、生産者の方の想いを今まで以上に意識するようになりました。結果的に、僕らがコミュニケーションの最前線で人と接するから注目されることは多いけど、本当に光が当たるべきは地域の生産者の方だと思うんです。現在、日本は大規模なスーパーが全国に広がっていったことで、地域で小商いをしていた人たちの産業が立ち行かなくなってきています。結果として人々の食が平均化し、気候風土に合わせて独自に発展してきた地域の食文化がどんどん欠落している傾向があります。

そんな現実を受け、最近の活動を通して特に伝えたいことは、「(地域の)皆さんの足元には、先達が積み上げてきた独自の食文化、習慣、歴史がある。それに気づかずに古いものとして見過ごすのはもったいないですよ」ということ。ケータリングをするため、外部から来た僕のような人間から見たら、地域の食文化は魅力の宝庫。その魅力を活動を通して発信し、作る人と食べる人の関係をもっと近づけたいと思っています。

今後も環境や社会問題の解決を目指しながら、地域の人々の想いを伝えつつ、素敵な食のカタチを提案したいですね。

 

地球と人に優しいだけでなく、見た目も美しく、そして美味しい。

そんな料理を実現する新納さんは、今日も日本各地を飛び回り、誰かのお腹と心を満たしています。

 


新納さんの活動について、もっと知りたい方はこちらから!

「PEACEDELI」

・「REBIRTH PROJECT CATERING

・「美味しい水曜日

「BeGood cafe」

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