育児×音楽が示す希望。ソングライター・Shusuiさんに聞く、「育音(Iku ON)」への想い「志動の理由、教えてください!」vol.1

 

誰かや何かのために志を持って活動する人は、なぜその一歩を踏み出し、行動し続けるのか。
きっとそこには彼らの活動を支える理由があるはず。

本連載では、志を持って活動する方にインタビュー。
その方が何を想い、なぜ活動を始めたのか、その理由を伺います。

記念すべき第1回目はソングライターのShusuiさん。
ソングライターとして『青春アミーゴ』(修二と彰)や『もう君以外愛せない』(KinKi Kids)など、数々の楽曲を有名アーティストに提供する一方、音楽グループ「canna」にてアーティストとしても活動。
また、ラジオパーソナリティー(bayfm78「あしたの音楽」)や東京音楽大学の客員教授としても幅広くご活躍されています。
2014年には育児と音楽を組み合わせた「育音(Iku ON)」活動を開始。特別支援学校を中心に「触れ合いライブ」やCD付き絵本のプロデュースを行い、子供たちとご両親に音楽を通して勇気と希望を届けています。
今回は、Shusuiさんに育音を始めたきっかけや根幹にある想いについて伺いました。

 


育音のはじまりは、自身の育児経験から


2014年に発表された育音。
そのはじまりは、三姉妹の父としての育児経験だと言います。

Shusuiさん(以下、Shusui):実は、育音は子育ての過程で自然発生的に生まれたものなんです。僕は三姉妹の父親なんですが、音楽家ということもあり、日頃は子供たちと一緒に歌ったり、絵本を読み聞かせたりしていました。その過程で、「育児に音楽が役立つんじゃないかな」と思って。子供って、音楽に触れている時に表情がすごく柔らかくなるんです。そんな楽しそうにしている様子を見ていて、育児と音楽が融合できないかなと思ったのがきっかけですね。

育音を発表して間も無く発売されたのが、CD付きの絵本『トムテの森のクリスマス』。絵本に音楽CDを付けるという斬新な発想の裏には、父としての想いがありました。

Shusui:実は1作目の『トムテの森のクリスマス』は、娘に自分のパパとママが出てくる絵本を届けたい、っていう思いからプロデュースしました。もちろん、主人公は僕の娘たち。パパとママ、それぞれ個性のある子供たちがいて、困難に協力して立ち向かうストーリーも自分が原案で考えましたね。さらにストーリーに合わせた音楽CDを付けて、物語と音楽、両方から楽しめる作品に仕上げました。

Shusui:2作目の『アフリカゾウのなみだ』は、アフリカゾウの保護を訴えるためにプロデュースしました。ある時、友人の紹介で保護活動をされている方と出会ったことをきっかけに、アフリカゾウが乱獲されているという現実を知ったんです。偶然にも新婚旅行先がアフリカだったこともあり、不思議な縁を感じて。絵本と音楽CDを組み合わせたものはこれまでになかったものなので、多くの方に注目していただけましたね。

 


違和感が「触れ合いライブ」のはじまり


絵本を2冊プロデュースした当時は、テレビやラジオなどで積極的にプロモーション活動を行なっていたと言います。そんな中、自身の内にある違和感に気づいたそう。

Shusui:2作目の絵本を発売した直後は、絵本をみんなの元に届けたいっていう思いが強くて、プロモーションに力を入れすぎていたんです。テレビやラジオで「絵本CDを買ってください、よろしくお願いします」って。
でも、いつしかそんな自分に違和感を持ったんです。「俺何やってんだろうな、自分が思い描いた育音ってこんなものじゃなかったよな」と。自分の信念とは違う方向に向かっているのをひしひしと感じましたね。これじゃいけない、と思い、特別支援学校を中心に数百冊の絵本CDの寄付をしました。そしたら、多くの方から沢山のお手紙をいただいて。その中には、「うちの施設に来てくれませんか」っていう内容のものもありました。これまで育音の活動で子供たちに直接歌を届ける機会がなかったので、ぜひ行ってみようと。それが2016年のことですね。

育音初の「触れ合いライブ」を行うため、ろう学校を訪れたShusuiさん。そこには、直接触れ合うからこそ生まれる、子供たちやご両親からの反響がありました。

Shusui:初めて「触れ合いライブ」で行ったろう学校は、施設がすごく整っていて、耳が聞こえづらい子供たちにも音を届けることができたんです。それで、子供たちと親御さんの前で歌や絵本の読み聞かせを披露したら、みんな本当に喜んでくれて。子供たちの目がすごく輝いていました。
「触れ合いライブ」が終わったあと、親御さんから、「我が子がこんなに音楽に感動して、これほど楽しそうに人と触れ合っている姿は見たことがなかったんです。本当にありがとうございました」って言っていただいたんです。その時、育音の活動は少しでもみんなの力になれているんだ、って実感しましたね。

 


「しゅうちゃん」として、一緒に楽しむ


これまでに開催された「触れ合いライブ」は30回(2018年12月1日執筆時点)。
子供たちと触れ合う時に、唯一意識していることは“自然体”だそう。

Shusui:僕自身、「触れ合いライブ」で意識しているのは、とにかく自然体でいること。子供たちと一緒に音楽を楽しんじゃうんです。時にはピアノの演奏中、横に座って鍵盤をバシバシ叩き始めちゃう子もいるけど、それもOK。一緒に音楽を楽しんでいるってことですから。「君、ノリいいね!!」って言って、続行します(笑)
やはり子供って「かっこつけよう」とか、「ボランティアをやろう」っていうこちらの意識を敏感に感じ取ってしまい、距離を作ってしまうんですよね。だから、僕は僕個人の悩みや邪念を一切忘れて、純粋に音楽と子供たちとの触れ合いを楽しんでいます。ソングライターのShusuiとしてではなく、「しゅうちゃん」として。
すると、子供たちも心を開いてくれるんですよ。帰り際には「しゅうちゃん、帰らないで〜」って囲まれちゃうくらいに。仲良くなりすぎて、予定していた終了時間をはるかにオーバーしてしまうので、育音スタッフに怒られることもありますね(笑)

 


障害に悩んだ過去と、個性を認めてくれる環境との出会い


これまで、仕事の合間を見つけては、全国の特別支援学校や障害者施設などをめぐり「触れ合いライブ」を行ってきたShusuiさん。
「触れ合いライブ」では自身の障害や過去について話すこともあると言います。

Shusui:僕自身、個性が強いというのもあるけれど、目に障害があったことで小中学校の時にいじめられて。1人だけお医者さんから止められてプールの授業はずっと見学だったり、目の保護のためにサングラスをかけていたり…。そんな僕を見た同級生が、「なんであいつだけ特別扱いなんだ」っていじめてきたんです。最初は上履きに画鋲を入れられるとかだったけど、だんだんエスカレートしてきて。
中学生の頃には精神的に耐えられなくなって、学校にはほとんど行くことができませんでした。ひどい時は「自分に存在価値はないんじゃないか」なんて思っていた時期もありました。

Shusui:そんな僕を変えてくれたのは「文化学院」って学校。そこの高等部の入学試験の時に、グループ面接があって。先生に「君は入学して何がやりたいの?」って聞かれたんですが、僕は「音楽やバンドがやりたいです!」って答えたんです。
普通は、「勉強がしたいです」とか受かるために聞こえのいいことを言うもんだけどね。音楽学校でもないのに思わずそう答えちゃって(笑)そしたら、もう1人「音楽をやりたいです」って言う子がいたんです。
その子が、今TRICERATOPSでボーカルとギターをやってる和田唱さん。唱ちゃんとは入学後、すぐに意気投合してバンド組むことになって。高校に入学してすぐに好きな音楽を共有できる友達ができたんです。

Shusui:その高校には、唱ちゃん以外にも僕の個性や好きなことを認めてくれる友達や先生が沢山いました。
たとえ障害があったとしても対等に接し、個性を認めてくれる環境との出会いは大きかったですね。今振り返っても、高校の友人や先生と出会って人生が180度変わったなって思えるんです。あの時、人生が拓けたなって。

 


“自分”を生きる


自身の個性を認めてくれる環境に出会い、大好きな音楽に没頭する高校時代。
育音の根底には、当時に恩師から掛けられた言葉がありました。

Shusui:高校生の時、先生から言われた言葉がすごく印象に残っているんです。「しゅうちゃんはそのままでいいのよ。あなたに良いところは沢山あるし、音楽に対する情熱は誰にも負けないのだから、それを伸ばせば良いのよ。」って。
実は、この言葉が今の育音の根底にあります。「人は違うのが当たり前、自分を生きろ」ってことですね。「触れ合いライブ」では僕のこれまでの経験を話します。こんな人生歩んできてるし、はじかれることもあったけれども、そんな僕でも結婚できて人の親になれて、好きな仕事もできて、少しの成功も手に入れて、人生捨てもんじゃないよって。1つでも好きなものを見つけて、たった1人でも信頼が置ける人がそばにいれば、その人は必ず救われると僕は信じています。
「触れ合いライブ」では、多くの子供たちに出会います。障害の程度や家庭環境もさまざま。そんな子供たちに、「何の問題もない、大丈夫だよ!」って言える人が必要なんです。「触れ合いライブ」でのコミュニケーションを通して、少しでも子供たちの気持ちが晴れやかになって欲しい。そう願います。

Shusuiさんのオフィスのいたる所に、彼の“好きなもの”が窺える写真や絵画が並んでいる

 


育音が生み出した笑顔


先日、Shusuiさんは育音を取材した番組で、思いがけない光景をご覧になったそう。

Shusui:この前、育音を取材していただいた番組を見ていたら、「触れ合いライブ」に参加した子のご家庭の様子が映っていて。僕が魂込めて作った音楽や絵本を笑顔で楽しんでくれていたんです。口ずさみながら歯磨きしたり、兄弟同士で読み聞かせをしていたり…。その光景に感動しちゃって。ボロボロ泣きましたね。僕の活動がみんなの役に立っていることがとにかく嬉しくて。自分が目指した育音の姿がそこにはあったんです。

「僕を必要としてくれる人がいる限り、これからも育音を続けていく」とShusuiさん。
子供たちに希望を与える彼自身もまた、音楽と人生を楽しんでいました。

 

写真(絵本の写真を除く):澤田もえ子

 


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