「写楽の魅力は 彼自身の異質さ、実態のなさ」 STREET SMARTを地で生きる 画家・アーティスト 柏原晋平氏 インタビュー前編

REBIRTH PROJECTはEASTPAKとコラボレーションし、「日本」 と「教育」をテーマにSTREET SMARTをコンセプトにしたバックをプロデュースした。バック背面の写楽をモチーフにしたイラストは、水墨画や洋画材を使った独自の作風で知られるアーティスト・ 画家、柏原晋平氏の作品だ。画壇や派閥に属さず独創的なタッチで 異彩を放ってきた氏。STREET SMARTを地で生きる彼に、今回の デザイン、そして写楽にどんなイメージを抱き描いたのか語ってもらった。

STREET SMART:

勉強で得た知識ではない、都市環境で生きるために必要な鋭い臨機応変さ

 

画家・アーティスト 柏原晋平氏

 

自分の作品を誰かが身に纏うということ

ーーーまず、今回REBIRTH PROJECT(以下、REBIRTH)とのコ ラボを受けていただいた理由を教えてください。この企画に興味を もったところは?

鞄に自分の絵がのったら、わあ楽しいと思った。 自分の絵がプリントされたものを誰かが纏っていたり身につけていたりするのって、すごく特別な行為、ことだと思っていて。 それを見てだれかがわあいいな、欲しいなと思ってくれたらそれが 一番誉れかなと。 日常のなかでふと目に止まってくれたら、単純に嬉しいよね。

ーーー写楽というコンセプトについてはどう思いましたか?

写楽をモチーフにしたのはめちゃくちゃ難しいと思ったよね。 企画を受ける時点で写楽だって聞いて、あいつだよなあと思った (笑)。
なんとなく誰か感があるけど全部伝承でしかないし、もし同じ時代に生きて、飲んでたら楽しいかなって思う。「ゴッホあいつ最近ずっとこもってるらしいじゃん、まじやばくな い?」「まじ?誰か声かけてやりなよ」みたいな(笑) 会話を写楽としたい。そんな会話を伝説上とか、過去の偉人たちとできたらそ んな楽しいことはない。彼だったらどう思っただろうとか、色々考えたり。写楽自身の異質さとか実態のなさ、悩んだけれど魅力的だよね。

 

写楽自身の実態のなさが魅力

ーーーアーティストから見た写楽ってどんな感じですか?

写楽は売れなかったでしょうね。その当時、正当な評価は受けてないわけで。それを含めてだけど、有名な役者さんとかをデフォルメしていて、漫才やコミカルな漫画の要素もあるし、絵を書いてきた人間にとっては面白い人。 写楽はきっと売れなかったし、彼に限った話では無いけど他の仕事で飯くってただろうし。なんとなくノリでちょっとおれも描いてみようかなって言ってたまたま描くくらい適当だったかもしれない。「これまじうけるー。ちょっと売ってみようぜ」みたいな、かもしれないよね。それを狙ってやってないのに、今更僕らがその事実だ け知って「10ヶ月しか存在しなかった謎の絵師」って言ってる。もしかしたら10ヶ月もやってなかったかもしれない。でもそのどっち かわからないのがまた魅力でもある。
謎めいた神秘的なって表現よりは、なんとなくノリで楽しんでいた人だったのかなって思いたい。

キーワードは「インパクト、パンクス、語る眼」。写楽の顔の部分が瞳になっている

インパクト、パンクス、語る眼

ーーーデザイン、そしてキーワードとして「インパクト、衝撃、語る眼」の3つをあげていますが、そこに込めた思いは?

彼が今生きていたら、を置き換えたり彼の時代に僕がいたらどう彼と接するかとか。色々考えた上で現代の人間である僕は、ノリで楽しんでいたようなバラエティ的な面でも、謎めいた神秘的って面でも、インパクトであり衝撃、パンクスだったっていうことを想像して描いた。
インパクトと眼とパンクを同時にやりたいと思ったら、やっぱり叩きつけるということ。その叩きつけた形自体もちょっととんがった一個の眼を意識した。ちょっと斜めにして遠目で見ると、眼があって真ん中の写楽が瞳になるっていうような雰囲気を。

ーーーなぜ眼だったのでしょうか?

アート自体が、伝達とか発信手段って眼から始まる。見て考えて手を動かして、それができてっていう。それを眼で見て感じてまた何かになる。絵そのものが語っているというよりは、絵を媒介として過去の人と未来の人が同じものを見てまた別のことを考えているっていうような。ちょっとメルヘンな見えないコミュニケーションがあるのかなと。

PRバーのライト下でポーズを取る柏原氏

描く行為は破壊でしかない

ーーーREBIRTHの理念「人類が地球に生き残るためにはどうすべきか?」そしてSTREET SMARTのコンセプトについて、どう思いますか?

正直に申し上げれば、REBIRTHの地球に対してっていうメインテーマと、今回の企画を僕の中で結びつけることはできない。僕個人でいうと、描く・造る行為で大量の紙を木々を捨てている。それ 自体は地球にとっては破壊でしかない。 地球のために、環境のためにを考えるのであれば、じゃあそれを伝えるためのツールとして、メッセージとしての 部分は僕は全力を尽くしますけど。メッセージとして知ってもらって、それをお買い上げいただいたさらにもっと先に、REBIRTHの根幹があればまったく問題ないなと思う。

草木を切り倒して作った紙に草木を描くとか、めちゃくちゃ馬 鹿げているんですけど、知らないで描くのと知ってて描くのでは大きく違うと思う。知った上であえて謝り続けようと思っています。ほんとうにごめんなさいしかない。

 

意味は後に生き残った人間が作る

ーーーREBIRTHの根幹に通じるものとして、アートはビジネスや社会に対して問いを立てる力があるという考えがあります。それについてはどう思いますか?

理論武装するかしないかは僕はどっちも正解だと思うけれど僕自身はどっちも興味ないというか。その時描きたいものを描くだけだし。意味ってきっと写楽然り、 後に生き残った人間が造るわけで、僕はどっちでもいい。僕の 口からどっちと語るほど何もない。

もっとストリートに

REBIRTHはなんというか、お洒落な人たちですよね。 もっとストリートにいって欲しいですね。ゴミに触れて欲しい。汚いを汚いと思わず抱きしめられるよう な。
僕は汚い方面を山ほど知ってる。思えば叶う、とか言えないし 。思えば叶わなくて何人死んだか。薬やったり、飛び降りちゃっ たり。ホストにはまってキャバ落ちして、身が回らなくなって なってしまった子だったり。同じ時代に生きている、いわゆる底辺って呼ばれている方々と、いわゆる高所得者の家のおしゃれな人たちがいて、もしくはそのもっと先に僕らより伝説を築いたのに、誰にも知られずひっそりと死んでいくミュージシャンや画家さんなんて山ほどいる。 そういうひとに光を当てられなかった時は凄く悔いが残る。死んだ後にフューチャーするような文化は嫌い。そういう人たちを世代を超えてマッチングする、そういうなにかってどうやって作れるのかなって。それだけはすごく思う。

 

柏原晋平●画家・アーティスト。1978年生まれ。高校卒業後、舞台美術やデザイン会社など、様々な仕事に従事しながら絵画、水墨画を独学で習得する。2002年頃より本格的に 作家活動を開始し、画壇や派閥に属さず画家・デザイナーとして数々の仕事を手掛ける。水墨画を軸にアクリルガッシュ、ペンキ等を使った絵画作品の制作からミュージシャンと のライブパフォーマンス、テキスタイル図案、ロゴデザイン、アートディ レクションに至 るまでその表現媒体は多岐にわたる。西洋と東洋の画材や技法、 感覚を混在させた独創 的なタッチで異彩を放つその作品は各方面で高い評価を受 けている。
京都・本能寺 塔頭 龍雲院への襖絵奉納をはじめ、中村獅童×初音ミクの共演でも 話題と なった超歌舞伎「今昔饗宴千本桜」、早乙女太一「影絵」、GACKT主演舞台など、様々な著名人への作画提供や企業とのコラボレーションなど制作している実力派アーティスト。

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